今回は、減価償却について見ていきましょう。減価償却とは、資産の価値が経年劣化や使用によって減少することを会計上で反映する方法です。減価償却のメリットは、以下のようになります。
減価償却のメリット
・資産の価値が正しく評価される
・利益が過大にならない
・税金が節約できる
家計と企業の減価償却の違い
家計と企業の減価償却の違いは、主に以下の点です。
家計では、減価償却という概念はありません。家具や家電などの資産は、購入時に一括で支払います。その後、資産の価値が減っても、必要経費に参入できません。
企業では、企業活動のために負債や手元の自己資金を用いて工場や設備などの資産を購入し保有します。その後、資産の価値は年を経て目減りしていきます。その目減りした金額分を企業活動のための費用として計上します。これが減価償却費です。
企業の例
企業が100万円で原材料を仕入れて500万円で売った場合、普通に考えると利益は400万円となります。利益400万円に対して税金が30%かかるとすると120万円が税金、なので税引き後の利益は280万円となります。それがそのまま手元に残るお金になります。
しかし資産の目減り分である減価償却費を費用に計上できたらどうなるでしょう。減価償却費300万円あるとします。そうすると利益は500万円-100万円-300万円=100万円となります。その100万円に対して税金が30%かかるとすると30万円が税金、なので税引き後の利益は70万円となります。
節税効果
あれ?減価償却費なんて考えない方が税引き後の利益が多いのに、なんで減価償却費なんて考えるのかな、って思いませんか。
理由は節税です。減価償却費を考えない場合に支払う税金は120万円だったので、減価償却費を考慮した場合に支払う30万円との差で、90万円も節税できました。
キャッシュフロー
実際手元に残ったキャッシュは幾らでしょうか。税引き後利益の70万円と誰にも支払っていない減価償却費300万円を足した370万円です。これがいわゆるキャッシュフローです。
減価償却しなかった時のキャッシュフローは280万円、した場合は370万円。企業がうまく設備投資をして節税してキャッシュフローを生み出すテクニックになります。
家計でも家屋や家財を減価償却費として所得の圧縮ができたら、所得税の節税ができるのに、そうはできないのが企業との違いです。年収500万円として所得税が10%だと50万円の税金、減価償却費400万円が計上できたら所得100万円で税金はたったの10万円に圧縮できるのに!、ですね。
まとめ
このように、家庭と企業ではキャッシュフローの仕組みが異なります。特に、減価償却という会計上のテクニックは、企業だけが使える強力な武器です。
以上、家庭と企業のキャッシュフローについて比較しながら実例を紹介しました。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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