前回の記事では財務諸表の読み方を住宅ローンと家計を例に紹介しました。今回は、それを企業の事例に当てはめて、減価償却と財務諸表の関係を見てみましょう。
家計から企業の貸借対照表へ
▲の記事で紹介した家計の貸借対照表を、▼で企業のものに置き換えてみます。この企業は1500万円の生産設備を固定資産として保有し商品を作って販売しています。固定資産は貸借対照表の左側、資産に入ります。家計で言う建物(持ち家)と同じですね。
※ローンは負債、自己資金は純資産と呼びます。
減価償却と損益計算書
▼企業は固定資産は長期間にわたって使用されるため、その価値は徐々に減少していきます。この価値の減少分を原価償却と呼び、損益計算書の費用として計上します。
※原価償却は、固定資産の耐用年数や減価償却方法によって異なりますが、一般的には定額法や定率法が用いられます。定額法では、固定資産の耐用年数を均等に分割して毎年同じ額を償却します。定率法では、固定資産の帳簿価額に一定の割合を乗じて毎年償却します。どちらの方法でも、原価償却は貸借対照表の資産の部の固定資産の帳簿価額を減らし、損益計算書の費用として利益を減らします。これにより、固定資産の経済的な消費分を反映するとともに、税金の節税効果も得られます。
減価償却が貸借対照表の資産を減らす様子
▼原価償却が貸借対照表の資産の部の固定資産の帳簿価額を減らす様子を絵にしています。固定資産の価値が原価償却費500万円分減る様子です。資産が下がり、貸借対照表は左右同額になるので負債も下がります。ただし負債側で下がるのは純資産です。なぜなら負債を返済した訳ではないからです。
▼原価償却分の資産が減り、純資産も減って左右が同じ高さになります。「あれ?純資産って減っちゃうの?」と思うかもしれません。自己資本で固定資産を購入し、固定資産の価値が下がった分は自己資本分も目減りするということです。
利益は貸借対照表を積み上げる要素
▼前回のブログでも紹介した様に、利益は貸借対照表をかさ上げする要素になります。剰余金として純資産が増えて、現金として資産が増えました。
原価償却と貸借対照表の関係を理解することは、企業の財務分析や投資判断に役立ちます。次回は、原価償却とキャッシュフローの関係について説明します。
その他、中小企業診断士の勉強に役立つ筆者の投稿です。よろしければご参照ください。
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